鉄剤注射!?
最近、若年スポーツ選手の鉄剤注射のニュースがありました。詳細は、新聞等を呼んでいただきたいと思いますが、これを初めて聞いた時、有り得ないと思いました。
体内の鉄分は血液中に流れている血清鉄と、必要になったときに使えるよう貯蔵した鉄(フェリチン)の二つで構成されています。
よくお金に例えますが、いつでも使える財布に入っているお金=血清鉄と必要な時に使うための銀行預金=フェリチンのような関係です。
多分お金が多すぎて困ることは少ないと思いますが、鉄分が多すぎると肝臓など様々な臓器に蓄積されるようになります。結果、肝臓の数値が悪くなったり、心臓の機能が悪くなったりと、余分な鉄は体に悪影響を及ぼすことがあります。フェリチン値が高すぎる場合には、状況によっては瀉血(しゃけつ)といって血液を抜く(輸血と逆)処置を行うことすらあるぐらいです。
血清鉄とフェリチン値は診察ではわからないため、血液検査で数値を確認する必要があります。今回はそのような確認をせず、成績のために注射を打っていたと記載されています。
注射を打つには医師の診察が必ずいりますので、そういった確認をおこなわずに注射を指示していた医師がいたことに驚きを隠せません。
実際、運動をすることで鉄分不足による貧血になることがあり対応が必要なことはありますが、その場合は、しっかりと数値を確認して鉄剤投与等の対応を行います。
また、原因となる運動を制限したり、制限できる状況でなければその他の対応法を考えるのも医師の仕事と自分は考えます。
鉄剤はサプリメントとしても売られており、体にいいと思いがちですが、過剰症もあり注意が必要です。
豊中市 呼吸器内科・糖尿病内科・内科 さとみ内科クリニック